摂食障害=心の病ではない?? 〜アルコール依存との違いから〜




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摂食障害と同種の問題群として
しばしば語られるアルコール依存症や薬物依存などと比較してみると、
母子関係論や女性性の否定説が、
摂食障害独特のものだと言う事が分かる。













アルコールや薬物への依存の場合、
それが青少年の問題であっても母子関係は
摂食障害ほどには問題にされないし、
成熟拒否あるいは男性性の否定といった解釈が持つ力も
摂食障害ほどには強くない。

















アルコールや薬物の問題と摂食障害の最大の違いは
摂食障害は女性の病理と考えられているところにある。




拒食や過食を解釈する枠組みとして、
母子関係や女性としての成熟のあり方が持ち出されてくること自体に
すでに、ジェンダーによるバイアスがかかっているといえるだろう。  





摂食障害の語り 〜〈回復〉の臨床社会学〜 中村英代 新曜社)引用



摂食障害の語り―「回復」の臨床社会学

摂食障害の語り―「回復」の臨床社会学


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確かに、薬物依存やアルコール依存は
それを断たせる事が終始治療の目的というイメージがある。





どうして依存したのか?ということはあまり触れずに
「どうやって止める状態を続けるか?」という”これから”のことに
フォーカスしている。





対して、食べ物依存症(摂食障害)は
家族関係や母親との関係、日頃の生活状況などを
カウンセリング的なアプローチで主治医から質問される事が多い気がする。




親子関係、発育環境が原因でしょ!という決め付けは
摂食障害以外の依存症には起こらない気がする。




アルコールでも薬物でも、当人の責任とされる割合がかなり多いが
摂食障害においては当人よりも両親、特に母親へ責任を求める風潮があるのは間違いない。













そう考えると、摂食障害だけが
親子関係や養育環境を咎められるのは間違っている気もしないでもない。




となると、アルコール依存と食べ物依存の違いは
発症までの背景ではなく「アルコールと食べ物、それ自体の特性の違い」なのではないかと思う。






あるいは、お酒は徹底的に溺れる、つまり受け容れる対象であり
食べ物は拒食であっても過食であっても、基本的には食べ物を拒絶している、という事が関連しているかもしれない。



そう考えると、
受け容れたい依存物と拒絶したい依存物という大きな違いがあるのだから、同じ依存症というカテゴリーであったとしても、
違う方向からアプローチをする
のは大学の先生に対して失礼かもしれないが、当然なのではないかと思った。
















人間が快楽を求めて生きるのだとしたら
快楽を与えてくれるものを貪欲にのめりこんでいくのは当然だし
どんどん求めていく。
ここに特に理由なんか無い。快楽からの快感が得たいだけ。








だけど、本来は快感である”食べる”という行為をどうして拒むようになってしまったのか。


これはやっぱり、養育環境や家族環境など、その人の価値観や感受性や生き方の土台を作った両親という環境をカウンセリングしていくのは当然の事だと思う。














”食べる”という人間の本能を拒否している。
それも、摂食障害が発症するまでは問題なく食べる事で成長してきた人間が、だ。




機能として食べる事ができなくなったわけではなく、
あくまで思考が心と身体を抑圧して「食べるな!」と強烈に命令しているに過ぎない。







ここに摂食障害の難しさがあるのだと思う。



食べ物によって育ってきたのに、それをある時から拒むようになる。
命の源を拒むようになるっていうのは食べ物を受け容れる受け容れないという問題の前にきちんと心のレベルから対処されるべきであって、
安易に他の依存症と比較してしまうのは見当違いだし何より、
摂食障害者にとって失礼だ。





特に長期に渡って悩んでいるものに対する分上でもあるようにさえ捉えられなくも無い。




食べる事を断つことが出来たら、どれだけ幸せなんだろうって思いながら生きている患者に「正しく食べて、食べる必要のないときは断てばいいんじゃないの?」というような断酒会と同じような治療法を提言されるのは極めて腹立たしい。





著者の方も摂食障害の経験があるらしいが
きっと早期に完治されたのだろう。


客観的には素晴らしい分析本を出版していても
患者の心は全く読めて居ないように思える。




他の依存症とは一線を画す病態なんだと言う事を再度綴って、
しめたいと思う。










ちなみに、アルコールと食べ物の特性の違いと思われる事は
コチラに綴った。