痩せると美しくなれるという幻想が摂食障害にまで至らせる
女にとって美しさを常に求める。
それは、美しさに比例して
選ばれる可能性が上がるから。
世の男たちはもちろん、
社会全体が女に美しくあることを求めている。
女はとかく周囲が
自分に対して下す評価を常に気にかけているものだが、
その周囲の評価基準のトップに位置するのがやはり
「美人であること」なのである。
選ばれる確率が上がれば
幸せをつかむ可能性が広がる。
自己存在、そして未来の自分を安定させる最重要要素は
美しさなのかもしれない。
ところが美しさには基準が無い。
だから女たちは多様な美を求めて迷走するのである。
■美しさ=痩せている??
美しさの要素は痩せていることがあげられるのは
時代の要請として間違いない。
痩せていても良いことが起きるとは限らないが
少なくとも、痩せていることがマイナス要因に働くことは
限りなく少ないだろう。
ただ、確かに痩せていることは
重要な美しさにおける要素なのかもしれないが
あくまで一つの構成要素でしかない。
そして、迷走の末に最もたどり着いてはいけない場所が
摂食障害である。
迷走に迷走を重ねて
美しさが全て痩せることであって、
痩せて美しくなれば全てが解決する。という考え方。
この考え方はもはやダイエット意欲が強い、という
領域を超えている。
これはダイエット依存と呼べるのではないだろうか。
■これがあると全てがハッピー=依存症
痩せればうまくいくっていうのは
お酒を飲むと全て
麻薬が出現実を忘れるとすっきりする
という依存と変わらない。
気分が刹那、楽になったような気になるだけ。
依存は心の病です。
食べ物は心の栄養不足を知らせてくれます。
そして、心の栄養不足には人間関係に満たされることです。
逆に考えると人間関係の不足は
とりあえず乗り切るために食べ物は極めて有効な方策だという事。
食べることで支えられることがある。
支えられている存在なんだから、
それによって起こること、体重が増加するっていうのは
悔しくとも受け入れるべき帰依なんだと思うけど、
なかなか理解できても納得できずに
吐いたり食べないことを自分に課したりしてしまう。
ダイエットは大切だけど
太ることを受け入れる気持ちもまた、育ててあげなきゃなのかな。
■摂食障害に痩せたい気持ちの存在は必須
痩せたい気持ちが発症前にあったのか
ダイエットに成功していくうちに生まれたのかは
ケースにもよると思うがなんにしろ、
症状の渦中に居る人間には痩せたい願望が存在しているのは間違いない。
拒食症というのは
痩せたいと思うあまり、ものを食べられなくなる症状。
(食べれないんじゃなくて食べたくないだけだけど)
一方、過食症は
意志の弱い人が誘惑に負けて食べてしまうのだろうと思われがちですが
実はそうではありません。拒食症も過食症もどちらも根底には
「痩せたい」という気持ちが存在している。
痩せたい人には他人からよく見られたいという願望もあります。
それは決して悪いことではないですが
コミュニケーションが苦手な人が
「仕事や勉強ができない、友達も居ない、だけど痩せれば何とかなると
考えるようになると「痩せていなければいけない」という
考え方の歪みが生まれる。
ダイエットによる外面の変化で相手と交流しようとしたり、
愛してもらおうとしたりしてしまうのだ。
それは、痩せる以外に自分が他人に良く見られるための選択肢が
思い浮かばないから。
■ダイエットハイ
ただ、痩せることが外側へのアピールではなく
内部の充足感を得るための手段という見方もある。
ダイエットはダイエットハイと呼ばれたり
プロセス依存という側面もあって、
痩せるという結果が欲しいわけじゃなくて
痩せていくことそのものに快感を覚える場合もある。
これは快感を得るには痩せ続けることが必要なので
快感を得られなくないときに、あきらめがつかずに
快感を得ようとさらなるダイエットに励んでしまう。
これもダイエットに依存していると言えるでしょう。
むしろ、どこまで痩せても痩せ続けることが目標なので終わりが無い、って言う意味では、こちらの方が危険とも言える。
そして、皮肉なことに多くのダイエットは
一時的に成功したように見えても、むしろ太りやすくしてしまう。
■ダイエットで太る
無茶なダイエットが続くと
痩せたいのに痩せられない自分自身を責め、
罪悪感を覚える人もいます。
それがヒドくなると
今度はストレスのコントロールが利かなくなり、
その反動でやけ食い(ストレス食い、過食とも言います)をしてしまいます。
まさに本末転倒。
食べないと、食べたくなるのが生きている生物としての人間の機能というか摂理なのです。
つまり、簡単に言うと
「ダイエットで太る」のです。
食べたいと言う欲求は
減量するためのどんな意志にも勝るでしょう。
減量の原理のひとつは
決して飢えないことです
大切なのはカロリーを摂取しているかどうかであって、
食べ過ぎているかどうかではありません。
太った人が「そんなに食べていないのに、体重が減らない」と言うのは
彼らが嘘を言っているわけではない。
たいていの人はダイエットをすると
実際には逆にもっと太ってしまうのが普通です。
ダイエットするたびに筋肉を失います。
ダイエットで失敗するたびに脂肪を獲得するのです
カロリーを
代謝の要である筋肉の多くを失うことになります。
間違ったダイエットは太る。
■間違った言説の流布
絶食すれば痩せる。
カロリーを摂取しなければ痩せる。
こういう間違った精神力とか努力がダイエット成功の要だという
神話を信じ込むと最悪の不幸は摂食障害という末路。
そこまでいかなくても
スリムではなく「痩つれる」という表現がピッタリの状況になってしまう。
肌や髪のハリやツヤが失われた
不健康な身体。
魅力的に見せるのに必要な丸みまでも失ってしまう。
エストロゲンの分泌も低下して
体調が優れず生理痛も深くなり
笑顔も失われていく。
なんと、
美しくなろうとしたのに、かえって老いてしまう。
これは、ツラいダイエット、耐えることを成し遂げた後のご褒美としては
あまりに悲劇的なのではないでしょうか…。
■心じゃなくてダイエットが問題かも
ただ、痩せたい気持ちを持っている誰もが摂食障害になるわけではない、という事実を鑑みて考察してみると
摂食障害の最大の敵はダイエット願望ではなく、
間違ったダイエットそのもの。
つまり、(間違った)ダイエットという行為。
それが摂食障害へと誘う。
食べないだけのダイエット、
カロリーから逃れれば脂肪も去ってくれるという幻想。
食べないという飢えた状態、飢餓状態の継続が
満腹中枢に狂いが生じ摂食行動がおかしくなる。
心の問題が無くても摂食障害っぽいことが起こってくるのは
このためであって、
全ての摂食障害を心の問題として捉えてしまうのは
ちょっと危険なのかな、とも思う。
■欠乏が定着すると食事量増加かも定着する
ネズミを使ったこんな実験があります。
三食きちんと与えていたネズミにある時から昼食や夕食を抜くと、
一回の食事の量が、それまでの1.5倍に増えるというのです。
その後、1日3食に戻しても、
一回の食事に摂る量は以前の1.5倍のまま。
これは、食事の回数を減らすと、一回の食事量が増えてしまうことの証明
つまり、食べないだけの間違ったダイエットは
飢餓状態を生み、太る要因を定着させてしまう可能性も拭いきれないのだ。
■まとめ
痩せようとして体重をコントロールしようとしたのに
いつの間にか、痩せることが全ての行動の優先事項になってしまい、
体重にコントロールされるようになる。
これは、ダイエット依存症と呼ぶべき。
何をしてでも痩せないといけない。
痩せないとダメ。痩せるとうまくいく。
痩せようとするのは悪いことだとはいえないけれど、
あくまで日常を輝かせるための一つの手段であり、要素でしかない。
ダイエットに乗っとられた苦しい生活をして
たとえ体重が理想どおり減っていっても全てがうまくいくとは限らないということは、しっかりと認識しておかなければならないと思う。
逆に言えば、「痩せることなんて指標の一つでしかない」くらいに
どっしりした心を持てるようになると、しぜんにゆっくり寛解していく疾患なのかもしれない。