ダイエット願望は過食・拒食から生まれる





私達はダイエットを
「痩せたいから(原因)→ダイエットをする(結果)」
という因果関係でとらえがちだ。



しかし、肥満恐怖と呼ばれるほどの強烈な痩せ願望は、
ダイエットを始める前からあるものとは限らない。




ダイエットには
ダイエットをするから(原因)→もっと痩せたくなる(結果)」面があることを見て行きたい。












●何気ないダイエットから過食が生まれ拒食が生まれる










ちょっと食べ過ぎる、誰にでもある事だ。


そして「昨日は食べ過ぎちゃったから今日は抑えようかな」
っていう流れ、これも誰もが考える思考法だ。


摂食障害者だけではない。


ちょっと節食する。


この節食に分岐点がある。





ダイエットが無ければ過食は定着しない。
たまたま食べ過ぎてしまった翌日から過剰に節食することで
再び過食を招く可能性。






脳が満たされないから。



一度はダイエットによる減量に成功するか、
別の理由で体重が減るという時期を経て、
その後で初めて過食に陥るのだ。





この時の過食で食べる食材は概ね健康的なモノではないことが多い。
そうすると脳に栄養がいかない。
脳が満たされずに食欲が止まらない。
そんな自分にイライラ。


必要な栄養素が行き渡らずに
自己制御だったり頭が働かなくて日常生活がうまく行かなくなる。



感情と食事と体重のコントロールを失った事で
自尊心が低下してしまう。





つまり、
今まで考えられたいた自尊心の低下から拒食と過食は始まるという
考え方と因果が逆の事が起こっているのだ。


痩せ始めてから、痩せていることを追い求めるようになってしまう場合もあるのだ。





■飢餓状態を補填するために過食は起きる



何気なく始めた節食、その反動で過食が起こってきて、
さらに過食をしてしまったから節食をするようになる。



過食して節食するというこの流れ、まさに摂食障害だ。





最初は誰もが持つような何気ない、ダイエットともいえない
緩やかなダイエットへの思いが過食・拒食を産み、そこから強いダイエット願望が生まれる。







何が言いたいのかというと、
別段、痩せたい願望も自尊心の低下も抱えていなかった一般の人でも
人間の持つ欲求を過剰にコントロールしようとした結果、摂食障害傾向の行動をとるようになって、
その行動から自尊心が低下してしまうという流れが存在していると言う事なのだ。












体重が思い通りに減っていく段階は楽しい時期である。
そこには、自己コントロールがうまくいっている満足感や体重が減っていく達成感がある。


そんな楽しい時期がずっと続くのであれば、
誰も過食や嘔吐で苦しんだりしない。
楽しい時期には終わりがあるのだ。



体重を思い通りに減らせる時期は長くは続かず、
ダイエットの反動にとっていずれ過食衝動がやってくる。
そして、人によっては過食を帳消しにするため、
嘔吐をするようになっていく。
するとさらに過食が激しくなっていく。





ちょっとしたキッカケでタイエットを始めただけの人が
毎日のように過食し、嘔吐するようになり、
摂食障害と呼ばれる状況に陥っていくのだ。















以下は、具体的な語りだ。







☆☆






『体重がいまのところよりちょっとでも増えるとすごいショックだった。
 ずっと減り続けると思ってるからでしょう。
 思っているからこそ思い通りに減らなくなると
 自分がダメだと思っちゃ う。
 自分の努力が足りない、心掛けが甘い、みたいな。
 なんていうのかな。

 全部自分の精神力でコントロールできると思ってたから
 減らすんだったらガンガン減らせると思ってたから。
 それでも増えちゃうって言うのはなんか努力が足りないんだ、
 精神力が足りないんだって思って。
 体重イコール自分の精神力みたいな』












体重は自分の精神力でコントロールできるものだと思っていた。
だから、思い通りに痩せられない場合、「自分がダメ」だという自責感が生まれる。


ダイエットが成功している期間は、
体重は意志の力でコントロールできる対象であった。


けれども、思い通りに食欲をコントロールできるのは一時だけで、
次第に痩せにくくなり、過食衝動に襲われるようにもなる。
しかし、相変わらず、体重は意志の力でコントロールできるものだと思い続ける。


その結果として、痩せられないことや過食の衝動は、
身体の自然な反応としてではなく、
自分の意志の弱さとして受け止められていく。


ダイエットをしては過食してしまう日々とは、いわば、挫折し続ける日々であり、過食のたびに自責感を募らせ続ければ、
「自信がない、最低、意志が弱い」と自
己否定的になってくことは想像できる。






さらに自信の喪失はさらなる絶食や嘔吐の契機にもなる。







過食と嘔吐ばかりしている自分はだめだと思うからこそ、
なおさら痩せたい気持ちが強まる。




けれども、自分はだめだという思いは、
まさに痩せようとすることから生まれているのだ。


こうして、「自分はダメ」だという思いは、
一巡して、痩せ願望やコントロール志向のさらなる強化へと循環的に繋がっていく。




つまり、過食症者がもつ自信のなさや自分はダメだという思いは、
身体の変化(ダイエット初期の痩せやすい身体から、痩せにくい身体への変化)に、
認識(身体は意志の力でコントロールできるという考え)が対応して居ないことから
生まれていると考える事が出来そうだ。


一回戻れた経験があるから、
本当に頑張ればなんとなるんじゃないかと、
次の成功を目指して痩せた身体に戻るための朝鮮が続けられていく。
こうして、嘔吐や絶食やダイエットは続けられていく。
それに伴い、過食もまた続いていくのだ。








☆☆





参考文献:
摂食障害の語り