50代レベルの口腔内


虫歯。
胃液を逆流させている嘔吐者
にとっては
避けられない代償だ。















嘔吐は、食べたものだけが出て行ってくれるほど
都合の良く便利な方法ではないらしい。



胃酸が逆流しているらしくその胃酸によって
口腔環境の負の遺産を遺してしまう事になる。っていうか、すでに
悲惨な状態になっている。
















嘔吐を始めて5年くらいまでは
「胃酸で歯が溶けるて若くして入れ歯」になった人がいる、という知識を
知っていたくらいで、痛みも虫歯も感じなかった。



「僕の歯は優秀だな」
くらいに思っていた。
中学までの歯科検診は確か、AからHまで斜線。だった気がする。











ただ、その時期まではあくまで
潜伏期間だったんだなって後に知ることになる。

















いっきに、激痛が走るようになった。
それも一箇所じゃない。


前歯も奥歯も痛い。
で、奥歯がいたいと思っていたら、
実は隣の歯の方がヒドい状態だったりして。















悪化するのは、どれかの歯じゃなくて
一気に全部に痛みが増して、かなりの時間と出費を
通院に費やした記憶がある。





普通の人なら
治療したら、それでセルフメンテナンスをしっかりすればいいのだが、
いかんせん、僕の場合はまだまだ嘔吐が終っていないので、
常に虫歯の恐怖を感じながら生活している。



















歯磨きには10分以上かけているし
嘔吐する時には歯ブラシも必ず準備する”道具”の一つになっている。





なるべく、早く救出してあげたいからだ。
本当は胃酸を戻さない(嘔吐を断つ)のが一番なんだけど…。











歯を「磨く」というより、「メンテナンス」をする。
という表現の方が正しい。


自分のものなら磨くといえるが、もはや半分以上の歯は、
仮歯差し歯になっていておおよそオリジナルの歯ではなくなっている。


歯の状態だけで言えば、50台の人の口腔より老化しているかもしれない。










こんな風に生涯にわたるダメージを負っているとわかっていても
過食嘔吐卒業しなきゃ!って本気になれないのは、
歯を大事に出来ないっていうより、嘔吐することが僕の生活にいかに必要な行為なのかってことの
何よりの証明なのだと思った。


























嘔吐を続けていると、
歯のエネメル質が逆流した胃酸で溶けてしまいます。
エナメル質はいったん溶けると元には戻らない。













歯は一度なくしたら
二度と生えてこない。









このことの尊さを痛感させられるのは
もっと歳を重ねたときに痛いほど実感させられるのだろう。










右下顎の奥歯は完全になくなりました。
前歯4本はかろうじて自分の歯だけど
他の歯は、治療なり差し歯なりになっていて
自分に与えられた歯ではない。





ただ、
優秀で心ある歯科医に出会い
幾ばくかの神経が残っている歯は存在している。














過食嘔吐している人の
歯の特徴は虫歯が歯根からじゃなくて
歯の先端の方からも蝕食が進行する事が。
本当の虫歯は歯根からばい菌が伝わっていくものだが
胃液を浴びせられている歯は先端からも溶けていく。






そういう特異な患者だと
分かっているのかいないのかは把握してないが
心ある優秀な歯科医に出会えたことは幸運だったかもしれない。










神経を取り除けば
痛みともおさらばと思って、安易に神経をとってもらうことを
望んでいた。






けど、神経を取ったら脆くなるし
痛みと永遠にさよならできるわけでは全くないって、
じっくり話をしてくれた。









すごい、真剣に患者と向き合っているだなぁって思った。












神経の手術をした方が、点数が取れて、儲かるのに。
けど、長期的にはメンテナンスに通わせた方が、儲かる。
けど、短期のキャッシュフローが潤沢じゃない経営状態なら
短期に大きな点数が取れる手術=神経除去を行う。







恐らく、今の歯科医さんに出会えていなければ、
神経が何もない、脆い歯になっていただろう。




神経があるから痛むんだ!だったら
神経要らない!!って安直な考えのまま
神経を全部取ってしまっていたらきっと、
もっと良くない口腔環境になっていただろう。




真摯な歯科医に出会えただけでも
かなりの幸運だったのかもしれない。










もちろん、先生に準じる衛生士の方にも
シゴかれるがごとくに
歯磨きには厳しく教わったのも感謝している。



















歯を守っていく事の大切さは
皮肉にも歯を失ってから痛感する事になる。





人間は失ってしか気づけないのだろうか。
そこにあるものの大切さに。








そして、失ってもなお
大切さに気づけないバカもいる。






治っても治っても胃酸という酸を浴びせていくから
処置歯は再び虫歯が進行して行く。










せっかく、時間とお金を掛けても無と帰す。








人より、数倍の速さで、色々な寿命を削りながらしか生きれない
不器用さが憎い。