親に望む扱い方
摂食障害の人がいる家に一緒に住んでいる人は
患者の症状もさることながら
生活を共にしているときに、非常に対応に困ることが多いと思う。
特に親に何を望んで、どんな行動を求めているのかというと、
すっごいわがままで理不尽な事が多いんですね。
わがままっていうか
何をされても満足しないんですよ。
その時の気分とか症状で
いちいち考え方も感じ方も180度変化していきますから。
その後の本人は「こんなことで怒ったりして私ってダメだわ」と
自分を責めたり、
「お母さんがいないと不安なの。いつもそばに居て欲しい」と思ったり。
あちこちに揺れ動く感情を自分でも
コントロールできずに苦しんでいるのです。
☆
例えば、冷蔵庫には常に食べ物を買ってきておいて欲しいと頼んで、
親が自分の感覚では到底わかりあえないという思いを抱えながら
買い物をしてきたとする。
これで少しはおとなしくなるだろうって思ったら
「どうしてこんなに買ってくるのよ!全部食べちゃうじゃない!!」
って言う風になる。
あるいは、仕事なんか辞めて過食する自分とずっと一緒にいて欲しい
と言って、もし親が仕事を辞めたとしたら、
「一人で過食したいから、家から出て行って!」と唐突に言い出したり、
自分のせいで親の自由を奪ってしまった…って落ち込んでしまい
過食が悪化してしまう。
一緒に居て欲しいけど自由にしてほしい。
この矛盾に両親ともに振り回されてしまうのは、本当につらい。
☆
過食行為を無視してほしいけど
過食をしている自分には関心を持って欲しい…
というのもあるよね。
なんていうか、行動は無視しても過食してしまう心と自分の存在は
しっかり心配して欲しい。
けど、過食行動そのものは衝動なので
文句を言われようが何しようが止まらないので、無視して欲しい。
自分でも抑えられない衝動をぶつけてしまっているという罪悪感で
イッパイだ。
そういう、どっちでも困る、正解の無い要求をされる側は
本当に辛いだろうし混乱する。
たとえ、言いなりになってあげれば満足するかと言ったら、
全くそんなことも無い。
過食を容認すれば、
「なぜ止めないんだ!もう、どうでもいいって思ってるんだな!」って
思う事もあるし、実際に言葉でぶつけることもあるし(笑)
☆
子供の病気は親のせいだ、って親が空気を出しすぎない。
空気を出しすぎると、優しさに溢れている摂食障害者は
親も苦しんでるんだなって、自分の言いたい事を言えなくなって気持ちを溜め込み、さらに過食嘔吐が進んでしまうから。
けれども、親のせいだ!って自分には責任が無いって思うことで
自分を守っている部分もあるから、罪悪感を感じ欲しい自分もいる…
これもスーパー矛盾しているが摂食人の心の真実なのだ。
☆
あとは、過食嘔吐をしていることを
気持ち悪いって子供って思ったり、
自分の子供がこんなことになってしまった…
みたいな空気感を出さないで欲しい
けれども、適度に親にも責任を感じて欲しいし
親のせいだ!って心のバランスをとっている本人の気持ちにも
気づいて欲しいような欲しくないような…。
ふり幅が大きすぎて、全く対応できないし、どれだけ振り回されて
要求に完璧に応えたところで、満足はないし穏やかにならない。
本当に困った存在なんです。
なぜなら、病人だから。
寝てれば治る類の病気じゃないから。
☆
本当に満足できる親の対応の幅が狭すぎて、
とてもじゃないけど付き合いきれない。
けれども大丈夫。
子供の機嫌は悪くて暴れてしまうかもしれないけれど
子供の要求に応えられなかったって落ち込む必要はない。
だって、子供自身が自分が何を求めているのかわかっていないのだから。
何をして満たされるか分からない相手を
満足させようとするのは困難を極める。
だから、親が自分達は子供の気持ちが分からないダメな親なんだ…と落ち込むことは全く無いのだ。
支えようとする気持ちは、子供にも伝わっていて、と
ても感謝しているんだけど
恥ずかしかったり病気に支配されていて、
感謝を表現する余裕がなかったりするだけだ。
感謝を出来ない自分にも落ち込んでしまっている、という状況をわかって欲しい。
☆
過食費用についても、迷惑だといわれるのも心が痛いし、
大丈夫!といわれても、申し訳なくなる。
自分でもどういう態度を取られるのが安心なのか
正直分からない。
だから、たとえキレて暴れたとしても、
なんとか動じないでいてくれるのが一番有難いのかも。
☆
病気のことなんか理解しなくてもいい。調べなくてもいい
病気になるくらい辛いこと、病気を抱えて過ごしている日常のつらさを
労うというか、認めて欲しい。
共感して欲しい。
本人以外に苦しみが分からないんだってことは、
ちょっとすれば子供も分かってくる。
たとえ親であろうとも自分の痛みは全く分からないだろうし
伝わらないだろうということはすぐわかる。
だからせめて、じっくりと話を聴いて欲しい。
病気のことを打ち明けている両親には
せめて、アンバランスで矛盾を抱えた自分でも
受け容れて欲しいっていうのが、最も望まれることなのかもしれない。
症状を抱えている自分をわかって欲しいのではなく、
そんな症状を抱えている自分でも、受け容れて欲しい。
ただ、拒否しないで存在を受け容れて欲しい。
きっと親に望むことなんてそれだけだし、
唯一にして最大の頼みなのかもしれない。
バランスを欠いて、態度がコロコロ変わる自分でも、
なんとか受け入れてもらっているという
安心感を得ることができれば、
治療は良い方向に進んでいくのだと思う。