仕事を辞めて家に居て欲しいと訴えたら


■子どもが仕事を辞めて
 家に居て相手をして欲しいと言ったときにどうするか?











問題は
仕事を続けるかやめるかという所にはない。











マリコさんはこうおっしゃっています。


「母が働いているということそのものより、
 いつも疲れているから相談ができない、
 忙しいから私の話を聴いてくれない、
 ということの方がずっと寂しかった」。

つまり、働いていることを言い訳にして娘の話に耳を傾けようと
しなかった、その態度こそが問題だったと言う事でしょう。


一方、母親は
「娘は私が働いていることが気に入らないんだと思っていた。
 そんなことを不満に思われても困るという気持ちだった」と振り返っています。


マリコさんの母親からも「私は仕事をやめた方がよいのでしょうか」と
質問されましたが、私は、母親にとって今の仕事が生き甲斐であることを
確認した上で「絶対にやめないで下さい」と答えました。


なぜなら、ただでさえ「自分が病気になったことで家族に迷惑をかけている」と
思い込んでいるマリコさんですから、
母親の生き甲斐である仕事まで辞めさせてしまったら、
罪悪感がさらに強まってしまうでしょう。


実際に、母親が勝手に仕事をやめてしまったケースでは、
子どもは罪悪感を抱くと共に煩わしさを感じます。

「私が仕事をやめたんだから早く治ってちょうだい」と
言わんばかりのプレッシャーを感じるのです。


そして、「母が仕事をやめてくれたのに申し訳ない」などとさらに落ち込むケースも
多いのです。


小さな子どもが病気になった場合は、どちらかの親が仕事をやめるというのも
必要な選択になるかもしれません。

しかし、摂食障害は思春期に起こる病気で、この時期の患者さんは、
いずれにせよ親離れのプロセスにあるのです。

自分が親離れしても、
母には他に生き甲斐があるから大丈夫、と思わせてあげるよう配慮も
必要です。

マリコさんの母親には仕事をやめることを断念してもらって、
娘との関わり方という本題に直面してもらいました。


病気が治った後、マリコさんは当時を振り返って、
「母は仕事が好きなんです。もしあのとき母が仕事をやめていたら、
 生き甲斐をなくした母の老後を、自分が責任をとらなければならなかったかもしれない。
 私も、これからは自分の人生を楽しみたいですからね」と
笑っていました。





参考文献:水島広子過食症拒食症を対人関係療法で治す/紀伊国屋出版


拒食症・過食症を対人関係療法で治す

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